||地域振興研究||   |調査のねらいエコタウン事業とは主な地域の事業概要参考

エコタウン事業
1.調査のねらい

 現在、環境問題−リサイクルや廃棄物処理施設の整備などは地域の大きな課題となっている。
 エコタウン事業は、こうした地域の課題に
応えるために創設された国の補助事業である。
 この事業に取り組んでいるところを調べると、単なる補助事業の枠を超えて、「環境」を核に地域振興を図ろうとする地域、処理施設の整備と地域振興を一体的とした取り組みを進めようとする地域がみられる。
 こうした地域をさぐることで、地域振興や地域づくりに役立つヒントが発見できるものと考えられる。

2.エコタウン事業とは

ゼロ・エミッションのための新たな環境まちづくり計画
 【ゼロ・エミッション構想】
  ある産業から出る廃棄物を新たに他の分野の原料として活用し、あらゆる廃棄物をゼロにすることをめざすことで新しい資源循環型の産業社会の形成をめざす、通商産業省の構想
 【エコタウン事業】
  このゼロ・エミッション構想の推進を図るために、通商産業省と厚生省が連携し、平成9年度に創設した事業
  地域の特性に応じ、総合的・多面的な支援(補助等)を行うもの
  ●目的−@地域の産業蓄積を生かした環境産業の振興を通じた地域振興
        A地域の資源循環型社会の構築を目指した総合的な環境調和型システムの構築
 【補助対象メニュー】
  1.エコタウン・ソフト補助金(環境調和型地域振興事業補助金)
   @プラン策定事業費
   A展示商談会開催事業費
   B地域情報整備事業費
   C講習会運営費
  2.
エコタウン・ハード補助金(環境調和型地域振興施設整備費補助金)
   @
リサイクル関係施設(ペットボトルレサイクル設備等)の整備

計画承認地域は9地域(2000年5月末現在)
 地方公共団体が作成した推進計画−エコタウンプラン−が承認された地域

1.札幌市 1998年9月10日承認 6.長野県飯田市 1997年7月10日承認
2.秋田県 1999年11月12日承認 7.岐阜県 1997年7月10日承認
3.宮城県鶯沢町 1999年11月12日承認 8.北九州市 1997年7月10日承認
4.千葉県 1999年1月25日承認 9.福岡県大牟田市 1998年7月3日承認
5.川崎市 1997年7月10日承認

3.主な地域の事業概要

 現在9地域ある承認地域から3つの地域のエコタウン事業を紹介する。

1.パートナーシップによる環境共生型地域づくり−宮城県鶯沢町
 (1)経緯
  ・鶯沢町はわが国有数の細倉鉱山を抱える鉱業の町であり、ピーク時1955年には13,065人の人口を擁していた
  ・1987年3月鉱山fが閉山し、人口は減少。1995年の人口は3,445人、65歳以上の人口比率は26.5%となっている
  ・過疎化、高齢化が町の深刻な課題であり
、この対策として「観光の町」づくりを進めるが、有効な対策とはなりきれなかった
  ・1993年、細倉鉱山が通産省の「リサイクル・マイン・パーク構想」のモデル事業に選定
    *リサイクル・マインパーク構想:鉱山製錬所を活用し、非鉄金属のリサイクル(無害化など)を進める構想
  ・1997年細倉製錬所の大株主である三菱マテリアル鰍ゥら二つの事業取り組みの申し入れ
   @使用済みテレビ、冷蔵庫のリサイクル
   A廃プラスチック油化事業
(2)パートナーシップ形成
 ・背景
   @
町は新たな<まちおこし>のテーマ(「環境との共生」)を求めていた
   Aリサイクル施設立地には地域住民の理解が不可欠
 ・提案
   三菱マ社から、「計画段階からの情報公開と住民参加」が提案される
 ・
動き
   @1997年7月-町民代表30人による「鶯沢リサイクル企業立地選定委員会」設置
    ・月1回ペースで開催、勉強会を実施
   A1997年9月-「環境共生型の地域づくり」など4分科会設置・検討
   B環境事業団が中心となって「パートナーシップ部会」を設置
    ・町、住民、企業の自由な意見交換の場
    ・観光資源の見直しや環境を全面にしたまちづくりのアイデアなどを検討
   C1998年1月−三菱マ社「パートナーシップ型デモンストレーションプログラム」提案
    ・地域に受け入れられるような環境マネジメントシステムの構築をねらう
    【具体的には】
     ・学識経験者、行政、住民が参加してデモプラントを稼動させ、影響を調査
     ・正当な評価が得られなければ事業化を断念
   D1999年11月
    ・「宮城県・鶯沢町エコタウンプラン」承認
    ・家電リサイクル工場のデモプラントの一般公開
 (3)エコタウンプラン
  三段階での展開。鶯沢町から広域(大崎・栗原地域)へ
   @基本方針
    ・蓄積された鉱山技術を活用した地域発展
    ・住民、企業、行政が環境パートナーシップを形成し、環境と調和したまちづくりを推進
   A基本構想
    ・第一段階-鶯沢町−家電リサイクル工場を中核とした環境調和型地域モデルの形成
     【具体的な施設】
      ・公開型家電リサイクル工場、リサイクル情報センター、リサイクル工房
    ・第二段階-大崎・栗原地域−環境調和型地域モデルの広域展開と地域産業への波及
     【具体的な施設】
      ・一般廃棄物広域高度処理施設、エネルギーリサイクル施設
    ・第三段階-大崎・栗原地域−新たな環境調和型産業の創造と地域からの発信
     【具体的な施設】
      ・環境・リサイクル技術研究所、ゼロ・エミッション型工業団地
2.
新都市づくり・天竜峡エコバレープロジェクト−長野県飯田市
 (1)新たな土地の出現
  ・天竜川治水対策事業(平成14年度竣工)により約100haの土地が出現
 (2)まちづくりの方向
  ・環境と調和する「産業」「都市」「コミュニティ」がテーマ
  ・環境を核に、産業振興、地域発展をねらう
 (3)3つの柱
   @環境と調和する「産業」づくり
    ・環境と調和する産業創造:情報収集と研究開発施設、インキュベーション施設を整備。環境関連産業の創造に関する情報
     センターをめざす
    ・地域内産業連鎖の構築:地域内産業連鎖の仕組みのつくりあげるとともに、新製品を開発
   A環境と調和する「都市」づくり
    ・新エネ・リサイクル拠点整備:リサイクル施設、エネルギー供給施設の整備
    ・美しい地域整備
   B環境と調和する「コミュニティ」づくり
    ・エコライフの推進:「エコハウジングビレッジ」(環境調和型住宅など)の整備。水処理等に関する新技術への取り組み
    ・自然環境学習の推進
3.地域と一体となった廃棄物処理施設などの整備・地球環境村−岐阜県
 (1)事業の推進方式
  ・廃棄物処理に関連する施設づくりにあたって
    @
リサイクル・余熱利用等の資源活用の場
    A地球環境問題に関する研究・実践施設を行う場
   を整備するとともに、周辺に
    B健康、福祉、医療、生涯学習、文化、スポーツ等の各種施設
   を整備し、良好な生活環境や自然環境の保全、創出を図る
 (2)具体的な施設構成
   @廃棄物処理関連施設
    ・ペットボトル、廃タイヤ等のリサイクル関連施設
   A周辺施設
    ・自然観察・展望広場、アスレチック広場など
      具体的な施設イメージは<http://www.pref.gifu.jp/s11225/kankyo/index.htm
 (3)第1号施設−「ささゆりクリーンパーク」
  ・ささゆりクリーンパーク−可茂衛生施設利用組合一般廃棄物処理施設
   所在地:岐阜県可児市
  ・核となるごみ処理施設と次のような施設で構成

施設名
概要
ごみ処理施設 24時間連続焼却。焼却灰は溶融し、リサイクル
リサイクルプラザ 缶やビンを再資源化。映像やゲームでリサイクルを学習
最終処分場 浸出水は処理後、洗車等の中水として再利用。さらに焼却炉で蒸発処置
遊林(ユーリー)の森 周辺に森林配置。展望台やアスレチック遊具、せせらぎ広場などを設置
わくわく体験館 廃ガラスを活用した各種ガラス細工が体験できる施設。体育館や宿泊施設が併設

4.参考

その他地域の事業概要

地域
概要
主な施設(事業)
札幌市

・リサイクル団地造成
 初期投資軽減のため、賃貸方式による用地提供

@ペットボトルリサイクル施設
A廃プラスチック油化施設  など
秋田県
・秋田北部エコタウン計画
(秋田北部:大館市等県北18市町村)
・基本コンセプト−豊かな自然と共生する環境調和型社会の形成
 @廃棄物の発生抑制、減量化、再資源化
 A鉱業関連基盤を活用した新産業創出
 B地域連携による環境循環型社会の構築
 C新エネルギー産業の導入

@家電リサイクル事業施設
 ・北東北3県の廃家電リサイクル施設→大館市に完成
 (南東北は鶯沢町の施設活用)
Aリサイクル製錬拠点形成事業
 (小坂製錬所活用による)
B廃プラスチック廃木材建材化事業
 (施設園芸用フィルム等の活用による高機能性新木材製造)
C大規模風力発電事業
 (600KW級風車×24基)
Dコンポストセンター事業
Eリサイクルプラザ・センター事業

千葉県 ・千葉県西・中央地域が対象
・産業集積を生かした環境産業の創出と厳密な意味でのゼロ・エミッションの達成

@エコセメント製造施設
A直接溶融施設(都市ごみの焼却灰の再資源化)
http://www.pref.chiba.jp/dailylife/news/ecotown9901-.html で施設詳細がわかります

川崎市

・臨海部の空洞化対策と中小企業のゼロ・エミッション化の推進を目的に、「ゼロエミッション工業団地」設置
・エコタウンの構想イメージは
http://www.city.kawasaki.jp/ecotown/ecozu.htm
参照

・廃プラスチック高炉還元施設
・ゼロ・エミッション工業団地に関しては、
http://www.city.kawasaki.jp/28/28sangyo/home/e-zero.htm 参照

北九州市

・響灘開発基本計画を踏まえ、臨海埋立地において、リサイクルを基調とする
 @総合環境コンビナート
 A実証研究センター
 B中小リサイクル団地
等を整備

@ペットボトルリサイクル施設
A家電製品リサイクル施設
BOA機器リサイクル施設
C自動車リサイクル施設
大牟田市 ・有明エコタウンΩ(オメガ)サイト計画
・1997年3月31日に閉山した三井三池炭坑を中心に蓄積された技術や低未利用地活用
・設置されるRDFの広域収集ネットワーク形成
・石炭灰の資源化、有用金属のリサイクル、農業(ビニールなど)・水産業(廃FRP船など)の排出物のリサイクルをめざすリサイクル産業団地形成
@一般廃棄物施設
 ・RDF発電所、 RDF焼却灰資源化施設、粗大・不燃ごみ資源化施設、資源供給施設
A中核的支援施設
 ・(仮称)環境技術研究センター、市民交流・学習施設
B産業廃棄物資源化施設

 

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